【青新14号特設ページ-NO.1】  
こちらは青新14号の特集と連動した、全3ページからなる青新15号が出るまでの期間限定ページです。
1ページ目は冊子ではダイジェストでしか紹介できなかった池田泰輔さんのインタビュー全文、2ページ~3ページでは、以下の通り青年部作家の皆さんのアンケート全文をお楽しみ下さい。
◆写真をクリックすると大きなサイズでご覧いただけます。

P2 http://qualia-ga.heteml.net/kantou1.com/seishin_vol-14_feature_article-2
中村正史さん、井上公之さん、古庄咲姫さん
和田泰明さん,前端剛さん、佐藤弘人さん
亀井隆公仁さん
P3 http://qualia-ga.heteml.net/kantou1.com/seishin_vol-14_feature_article-3
木村英昭さん、畠春斎さん、金谷五良三郎さん
宮崎匠さん、兼田知明さん、岡田泰さん
藤巻晋さん

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2018年8月某日、青新14号の特集である青年部作家紹介のクローズアップ作家さんとして、竹芸家の池田泰輔さんにインタビューに行ってきました。

池田氏2

竹芸家 
池田泰輔さん
(東京第三東青年部)

武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業。

大学を卒業後、父である三代・瓢阿に師事。「竹樂会」講師をつとめる。また、茶道に精進するとともに、異分野の若手作家たちと組んで新たな作品づくりにも意欲的に挑戦。月刊茶道誌『淡交』や『新版茶花大事典』(淡交社)などで、茶道具のイラストを担当。(HPより抜粋)

http://www.ikedahyoa.com/

◆お父様(三代 池田瓢阿)と同じ武蔵野美術大学に進学した理由と、専攻が日本画なのはなぜですか。

(家業を)継ぎたいということは子供のころから言っていた 継ぐのであれば美大に入るようにと言われていたため美大に進みましたが、専攻は特に言われていませんでした。父は工業デザイン専攻でした。 美大に入る趣旨は美的感覚を磨くためであったので、どこの学部に入るかは決められてませんでした。 仕事で工芸の道に入ることは決まっていたため、工芸の部分は父から学び、美大では他分野の事を身に着けて視野を広げていきたいと思い日本画を専攻しました。

家業を継ぐと決めたのは何歳くらいからですか。

物心ついたときから家業を継ぐと決めていました。祖父(二代 瓢阿)や父が仕事する姿や展覧会を覗きに行ったりと、お茶の世界や仕事の世界を子供なりに見てきたので、自分もこの世界に当たり前のように入りました。思い込みがあったと思います。

家業を継ぐのは、環境による要因がありましたか。

そうですね。妹だけで他に男の兄弟もいないですし。現代は女性が継いでもおかしなことはないですが、小さいころから長男だし自分が継ぐと思っていました。実は親からは仕事事態が不安定なので反対されていたんです。 生き残っていくのは厳しい時代なので両親も一度は反対しました。勤め人に比べ安定した仕事でもなくアップダウンもあり、福利厚生もないので自力で生きていくしないので。その一方で、この仕事の良さというものも両親は良く知っているので(責任感、仕事を持つ意義を良く知っている)、厳しいことを知った上で継ぎたいと言った際には喜んで迎えてくれました。不安定な仕事なので中途半端な気持ちではいられません。この世界に入ってから、しまったかなと思った(笑)。

◆継いでくれてご両親は喜んでいらっしゃるんですね。

自分の代で終わらせない、次の世代に残していくという責任感があるので、(自分が継ぐと言ったことは)だいぶ違うと思います。

茶杓:ゆずる葉

茶杓:ゆずる葉

◆安定しない仕事という厳しさを越えた良さは。

第一にお茶とのかかわり合いを違った視点、工芸作家としての視点から見えること、自分で作品を作っていくということにやりがいがあること。自分はお茶道具を作ることをやりがいにしてきたので大筋はお茶の世界、それ以外で感性や 時代の名物籠の写しを自分の作品として作り、経験からフィードバックしてオリジナルの作品に活かしていきます。そして、作品を手に入れていただいた方に実際に使って頂き、ときにお茶をやっていく中で祖父の作品や父の作品などに、自分たちの分身として出会うこともあります。そのときに やりがいを感じます。
お茶の世界との交流も素晴らしい。これもお茶の世界に身を置いていないと出会えないことですね。自分もお稽古に通うこと、青年部の皆様に出会うことなど、お茶の世界に身を置くことで、魅力的なお茶の世界に触れられる。お茶の世界に触れることで魅力的な世界になる。そのなかで工芸作家の自分という、特殊な(普通だったら立てない)立ち位置に立てる。

竹細工はアートであり実用ですが、実用であることは意識されていますか。

使えないと意味がない。お茶をやらない陶芸作家さんの作品は使えないと良く言われますが、竹細工も同じです。 お茶の世界を知らない竹工芸作家さんの作品は使いにくい。感性や寸法・お道具との調和があり、花入れであっても花を活けやすい形や様子がある。これは床の間に活けてみないとわからない。それを知らずに作っても、いくら技術があってもうまくいかない。お抹茶の世界観に合うように草花を活けられる形に、茶杓でもお棗やお茶器に置いた際に違和感がないこと、これを意識して作っています。これを意識できることが、代々(お茶道具を作り)続いてきた強みでもあり、楽しみでもあります。

代々やってらっしゃると、一般の人にも解る、それぞれの代の個性などあるのですか。

ありますね。解る方もいらっしゃいます。 写しであっても個性がでます。自分の個性は自分では解らないですが、敢えて言うならば若い(今しかない個性ですね)。 この先50年と過ぎていくと違う個性がでると思います。その時に応じた味わいがあると思います。

将来に、「どうなっていたい」など現代作家としての具体的なビジョンはありますか。

まずは本業をものにすること。それは、お茶をなさっていただいている方にちゃんと使っていただけるように作品を作ることです。 今年の5月に相伝展を開催しました。池田家では代々、茶道界の名手の方や美術館や記念館で見せていただいた銘品の写し物を得意として作っています。今までは、まだまだ作ってはいけないものも沢山ありましたが、今回その区切りが外され、全ての作品を作る許しが出ました。それで相伝展とさせていただき、沢山銘品写しを作りました。まずそれが挑戦です。 偉大な作品であればあるほど、誤魔化しがきかないので挑戦。写しを作るのは、贋作を作るわけではなく、本物をみて自分なりの感性でそれをどう表現するかの過程です。それに、写しと言っても作家によって作風に違いがああります。例えば、 桂川籠。香雪美術館で見てきたのですが、本物は髭の部分がほとんど取れてしまっているんです。それを100%表現してしまってはお道具として使いにくいためアレンジしていきます。自分の中で、桂川の世界観をどのように表現していくかを考える。テクニックも大事だけれども、そのなかでどう表現していくか、世界観が大切なんです。

自分の感性を作品に落とし込んで自分の作品を作るだけでなく、お客様のご注文もうけるのですか。

メインは自分の作品を作ってます。ときどき、お客様からリクエストを受けますが、数としては少ないですね。

池田さん個人やお父様も含め、竹細工の世界の中でトレンドはあるのですか。

着物の世界のような激しい入れ替わりは籠の世界ではないです。ただ、大きさは小さくなる傾向があります。それは、住宅事情によるもので、畳のあるお部屋のない方が増えてきています。ですから、洋室に飾っても形になる籠や、玄関に置けるかなどを意識して作ります。 また、時代による変遷でいうと、好みが硬くなってきているかなと感じます。具体的にいうと、唐物風のきっちり細かめに編まれたものが好まれる。今の人の感性なんでしょうね。お茶全体の好みも変わってきていると感じます。祖父の時代は大侘なものが好まれました。大侘でざんぐりしているもの。実はざんぐりしているものは、感性や技量がそのまま表れるので表現が非常に難しいんです。ざんぐりしていながらしっかりと形に収まり、かつお茶をやっている方の好みに合う、昔はそういうものが好まれました。現在はそういうものが好まれない、なかなか理解してもらえない傾向に感じます。

「昔はざんぐりした籠も冬の席にもつかっていたから使ってほしい」、という内容がブログにありましたが(今は特にざんぐりしたものは涼しげで夏という雰囲気があり、炉の時期にどう使ってよいか分からないです)。

江戸時代後期になってお茶というものが堅くなる時期があるんですね、その中で出てきた風潮ではないかと思います。江戸時代後期からお煎茶が入ってきて、大流行する。 関東から想像できないくらい煎茶が流行し、お抹茶が下火になる時期にそういう風潮が生まれてきたのかなと、因果関係はないのですがそういうタイミングです。牡丹籠などの唐物は、風炉、炉と両方の時期に使われますが、ざんぐりしたものは炉の時期には使われなくなってしまいました。現代はそれが当たり前になってきたので取り入れるのは難しいでしょうね。古い会記、松屋会記などでお正月の時にざんぐりした籠花入れに松を入れて荘っていた記録があるんです。ざんぐりというのは編み方のことなんです。隙間があり、ちょっと太めの材料で、太めで太さも均一でないものを温かみのあるように編むものなので、炉の時期に合うのではないかと思います。見え様が大切です。

作りものの講座のみでなく、このような講義もお願いできると良いですね。
 こういう使い方もある。ということを教えてほしいです。

見え様なので、どういうものがあって、こういうふうに活けると炉の時期に使っても違和感ない、というようにビジュアルで伝えた方が良いと思います。例えば、先程あげた桂川は包容力のある形で、冬の暗い茶室に、炭の光に色の落ち着いた桂川が荘られていて、そこにぱっとお花が活けられている姿を思い浮かべて下さい。今のお茶室は明るすぎて見え方が違ってくるので、他のお道具の見え方も違ってくると思います。

作品を作るときには照明の雰囲気まで気を使って作ているのですか。

そこまで気を使いません。いかなる場でも活かされることを意識して作ります。あとは席主の力量です。 そくらいの力量があると、(自分で言うのは憚られますが)見て魅力を解っていただける。そうでないと、「なんだこの高いの、ネットでもっと安いのが沢山ある。」とそちらを求められる。見る目があって力量がある方は、それなりの価値を認めて手に取っていただける。 我々の作品は高いですし、誤解されることもある。ただ作品にはバックグラウンドがあって、材料やそれを求めていく過程があり、初代二代三代と積み上げてきたものがあって、それを伝える我々がいます。そうしたものを作品に表現していくので、そこを解ってくださる方もいれば、「まだまだ修行が足りない」とご指摘を下さる方もいる。

バックグラウンドも考えて作品を見て欲しいということですね、私たちが作品を観る際にどこを見た方が良いのでしょうか。

まず一番大切なことは、お道具としてどう使われるか。どのお茶室でどのお道具と併せてどう使うか、を考えていただき、またそのような機会があるかを考えていただく。イマジネーションが非常に大切。 お茶会にはお迎えするお客様もいますし、いろいろなシチュエーションがあり、それに適しているかを想像して欲しいです。 そしてご自身の感性として受け入れられるか。好みに合うかということが大切です。素直な気持ちで今までの経験、美術館お茶会で見てきたことを踏まえご自身の好みにあうか、適うかどうかがとても大切です。

イマジネーションと勘が大切
 お茶の世界との関わりあい、工芸作家としての視点
 お茶の世界の全体と、個とを見る、両方を伝えたいのですね。

お茶の世界で作品を作るのみでなく、思考が固まらないようにお茶の世界以外に自由に作ることもあります。 いわゆるフリースタイルです。それがお茶の世界に活かされることもあります。 無理するのは良くないと思います。積み重ねるものを地道に積み上げていけば、自分のカラーは自然とでてくると思います。 自分が思い立ってやることはそこがスタート地点なのでなかなか定着しません(時折当たることもあるけれども)。だから無理することはないと思います。 もちろん挑戦することは大切ですが、本業をしっかりやりつつの挑戦です。 真面目につづけていくと、あるとき気づきがある。その中でトライ&エラーを繰り返し、ごくまれに自分の代の自分が考えてできた成功かもしれない、という瞬間がときどき生まれてくる。その方が周りの方にも理解していただけ、新しいものが生まれたことが伝わる。常に新しいことは考えていても芽吹くものはほんの一握りなので、だから沢山種は蒔くけれども、その内の一つ二つ芽吹けばいいと思っています。

西洋の文化も、参考になっているのですか。

西洋も東洋も影響し合っています。お茶以外の展示会や美術界にいき視野を広げることが大切だと思います。 いろんな分野、いろんな方の世界観をみつつ、具体的に自分の思考に生きていかなくても良いもの面白いものを見るということが大切。興味をもっていろんなものに触れていかないといけないと思います。これは、出不精なので意識しています。 視野を広げていくことが大切です。

作品へのアクセス情報を教えていただけますか。

ホームページのメールフォームからアクセスいただく、もしくは展覧会に来ていただくことが良いと思います。 2~3年に1度日本橋三越のギャラリー、個展は5年おき、籠の教室に来ていただいている会員様と展示する機会があります。柿傳ギャラリーで3年に1回展示会を行っています。展覧会等の情報は、ホームページに載せてありますのでご覧ください。また、青年部の講師の依頼は直接ご連絡ください。

青年部の講師は茶杓講師のみでなく竹籠なども講師していただけるのでしょうか。

もちろんです。籠は茶杓よりも手の入る部分が多くなるので金額も上がりますが。 1日でつくって持って帰っていただけるように準備しています。持って帰っていただくことを大切にしているので、人数が限られてしまいます。茶杓の講座ですと20名程度は大丈夫ですが、籠となると途中で必ず私の手をいれないといけない過程がでてしまい行列になってしまうので人数が限られてしまいます。このあいだ提案させていただいたのですが、蓋置もできます。 竹にのこぎりをいれて、やすりで磨いて、穴をあけて完成。風炉・炉一双。新しい提案です。

講演などを聞いてみたいと思いました。ありがとうございます。

講演の話もいただければ嬉しいですし、以前に行ったこともあります。 スライドを使って竹と籠の歴史についてなど講演しました。

http://www.ikedahyoa.com/

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亀井隆公仁さん
P3 http://qualia-ga.heteml.net/kantou1.com/seishin_vol-14_feature_article-3
木村英昭さん、畠春斎さん、金谷五良三郎さん
宮崎匠さん、兼田知明さん、岡田泰さん
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